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ISBN4-88978-032-7

廉岡 糸子著

A5判 206頁
定価 (本体2,000円+税)

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大胆不敵な女・子ども
−『小公女』 『秘密の花園』への道−

本書でとりあげる主な作品は、 煽情小説の 『上流階級のレディ』 (A Lady of Quality, 1896)、 ロマンス小説の 『ローリーの娘』 (That Lass o'Lowrie's, 1877)、 『ある女の意志』 (A Woman's Will, 1887)、 『シャトル』 (The Shuttle, 1907)、 児童文学の 『小公子』、 『小公女』 とその原作の 「セーラ・クルー」、 及び 『秘密の花園』 などである。
これらの作品の中で 『上流階級のレディ』 のヒロイン、 クロリンダ・ウィルダスは大胆不適な女性の姿を最もあからさまに示している。
そこでまずはクロリンダについて述べ、 当時の社会の規範や女性観を探ることから始めたい。
バーネット自身、 クロリンダは 『小公女』 のセーラ・クルーに通じるキャラクターだと述べているが 3、 単にセーラだけでなく、 間違いなく後の 『秘密の花園』 のメアリ・レノックスに通じるキャラクターでもある。
これらの作品を年代順に見れば、 『上流階級のレディ』 は 「セーラ・クルー」 の後、 『秘密の花園』 の前に出版されている。
したがって 「セーラ・クルー」 のセーラはクロリンダの雛形で、 『秘密の花園』 のメアリ・レノックスはクロリンダを引き継ぐ者となっている。
バーネットは少女が主人公の 『小公女』 と 『秘密の花園』 の中で、 自信を漂わせながら敵対者と闘うセーラや依怙地さと攻撃性を梃子に何事も思い通りに実行するメアリを描いたが、 もしかれらが成人したヒロインであれば、 恐らく 「悪女」 と呼ばれることになるだろう。
本書では一章で 『上流階級のレディ』 のクロリンダや彼女の周辺の女性たち、 二章でロマンス小説のヒロインたち、 三章で児童文学の三つの物語に描かれた主人公たちを取りあげる。
そして今も読まれる子どもの物語の主人公たちが煽情小説、 ロマンス小説の女性たちとどれほど深い関わりを持っているかを見ていく。
しかし 『小公子』 のセドリックは別として、 バーネットの作品に描かれたヒロインのみに焦点を置くことは、 あるいは木を見て森を見ないことになるだろうが、 あえてヒロインに注目してバーネットが繰り返し描いた大胆不敵な女・子どもたちの姿を述べていきたい。