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ISBN978-4-88978-096-3 |
大槻 博著 |
A5判 320頁
定価(本体2,800円+税) |
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英語の語彙に与えた外国語の影響 |
言語はお互いに影響を与えており、それは言語を話す民族の歴史を示すことでもあり、文化の伝搬を示している。 英国民はブリテン島に渡ってから多くの民族と接触し、英語は他の言語の影響を大きく受けてきた。英語はアングロ・サクソン人が西暦450年頃にブリテン島に英語を持ち込んでから大きな変化を遂げた。
英語とドイツ語は同じゲルマン語であるが、今日では全く別個の言語とみなされている。 それは英語は屈折を無くしたからであり、ドイツ語も英語も発音が大きく変化したからである。 また英語は非常に多くの単語を借用している。 そのために英語の語彙は二重構造になっている。例えば、「学ぶ」はlearnとstudyがあり、「教える」もteachとeducateがある。 太陽はsunであるが、形容詞の「太陽の」はsunnyがあり、solarもある。 この二重構造は日本語にも当てはまり、「学ぶ」は「勉強する」があり、「教える」は「教授する」がある。
「太陽」も「日向ぼっこ」の「日」がある。 この二重構造が生じた理由は、英語も日本語も外国から単語を採り入れたからである。 外国語から採り入れることを英語ではloan「借用する」と言い、採り入れられた語はloan word「借用語」と呼ばれている。
今日使用されている英語の語彙数は、Webster III Internationalには約45万語が記載されている。 この膨大な数の語彙のなかで日常会話として使われている語は圧倒的に古期英語期から使い続けられている英語本来語である。 しかし、新聞、書物、論文などを含めてみた場合、英語は多くの借用語を使用している。 古期英語期にはケルト語、ラテン語、古ノルド語などから、中期英語期にはフランス語、ラテン語などから、近代英語期にはラテン語、ギリシャ語、さらには世界各地の言語から単語が借用された。 それゆえ英語の単語を形成している要素は外国語であると言える。 古期英語期では語彙全体における借用語は約3パーセントにしかすぎなかったが、今日では英語本来語は25パーセントであり、残りの75パーセントは借用語であるとされている。 借用語の内訳はラテン語、フランス語、イタリア語などを含めラテン語系は約65パーセント、ギリシャ語系は約10パーセント、スカンディナビア語系は約5パーセントと見積もられている。 このように語彙増加の原因は圧倒的に借用によるものである。 単語の語形と意味がどのように変化したかを知ることを学ぶ学問はetymologyと呼ばれ、etymologyeの語源はetumos「真の」+logos「単語」+is(名詞を作る接尾辞)からなる。 すなわち、単語の起源からその単語の真実を学ぶことを目的としている。 本書は英語の語源を述べることを意図するものであるが、特に外国語から借用された単語の語源を述べることであり、言い換えれば外国語が英語の語彙に与えた影響について述べるものである。 第1章では英語がインド・ヨーロッパに属することと英語の歴史、第2章ではインド・ヨーロッパ祖語から英語への発音の変化、第3章では英語にみられる借用語について、第4章ではある単語から二つの単語が生じた姉妹語について、第5章では借用語のなかでフランス語に次いで大きな影響を与えたラテン語からの借用について、借用される際のラテン語の語形について、第6章では語彙増加の原因となっている派生について語根、接頭辞、接尾辞を列挙した。
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