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ISBN4-88978-060-2 |
吉村 克郎著 |
四六判 200頁
定価 (本体1,500円+税) |
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健康長寿への道 工学的思考による健康学 |
同じ健康を守ることを目的にしても健康学と医学とでは考え方が全然違います。 医学は受動的なもので、事が起きてからやむをえず医療するものです。 健康学はもっと能動的なもので、広く前向きに、いろいろな学問の力を借りながら、人生の幸福を求めるものです。 人生の幸福にも人それぞれの好みがありますが「人生は通り抜けて分かるもの」です。 諺に「太く短い一生より細く長い一生」とあります。 そこでここでは幸福な人生として、健康長寿への道を探っていきたいと思います。
★工学的思考による健康学の発祥
筆者は機械工学出身で、曾て化学装置工業の会社に勤め、工場において設計・建設・保全・工場管理を長らくやってきて、やがて本社勤務になったのですが、やたらに気にいらぬ事が多くなり、そのストレスから胃炎やぎっくり腰を頻発していたのです。 しかし退職して自分で会社を経営し、仕事は以前より遥かにハードではあるし利益も無い不安もあったけれども、仕事が前向きにやれて快適な状態になっていたためか、そんな病気は一切起きないし、風邪も引きませんでした。
ところが、十年間会社経営をやって区切りが出来たので六十五歳で退陣し、さあ何をしようか、と思っていた時の夏場に、嫌だなぁと思いながら引き受けた機械の組み立て仕事を、一人で真夜中までやったときに、一挙に胃炎が発症したのです。 久しぶりに持病の発生です。 そこで町医者の甥に治療法を聞いたのです。 甥は血圧を測れというので、測ると一七八―一二五ミリという高血圧状態にありました。
そこで甥は、それはストレスによる胃炎であり高血圧だから、ストレスさえ無くすれば病気は治ると診断し、そのストレスを無くして免疫力を高める方法として「毎日二〇〜三〇分の歩行と一五分くらいの腹式呼吸法の実施・毎食は粥・決まった時間の血圧測定値の報告をするように」と処方したのです。
この時にストレスと言う言葉の意義を初めて知ったのです。 それまではストレスとは仕事の負荷とばかり思っていたのでした。
驚いたことに、いつもだったら一ケ月以上は治療に通ったのですが、それが健康法だけで一週間で治ったのです。
手術や薬だけが医療ではないのです。 つまり事前にこのような健康法をやっておれば胃炎やギックリ腰などにならなかったのです。 この時に医療よりは健康法だ!と確信したのです。
このことが工学出身の筆者が健康関係の研究を始めるきっかけとなり「事実を集約して真実を引き出す」という工学的手法によって健康法を確立したい」と決心したのです。 以後、図書館に通い数十册の健康図書から資料を集めて、これをまとめ、その研究成果を一九九一年から当時の有名な技術雑誌「燃料及燃焼」に「工学的健康法」として、一九九八年まで連載させて戴いた次第です。 これらの資料の蓄積が以後の健康学「健康長寿への道」の基礎となっているのです。
★文化が寿命を伸ばす
昔は人生五十年と言われて六十歳まで生きる人が少なかったのです。 それでは昔は長寿者がいなかったかというと、貝原益軒の養生訓によっても、八十歳を中寿としています。 つまり、八十歳はそれほど珍しくなかったのです。また、百歳は期寿、百八歳は茶寿、百十一歳は皇寿、百二十歳は昔寿とあったのは、その必要性があったのではないでしょうか。 さて、人間の最大寿命は百二十歳くらいといわれています。 経験的にも人間の周期は六十年とされ、その第二周期の始めを還暦とし、この周期には必ず死が訪れることになっています。 ところが、平均寿命については明治時代から大正時代は四十三〜四十四歳くらいで、高齢化率は5%程度でしたが、文化や保健衛生などの進歩から徐々に改善され戦前には平均寿命が五十歳になっていました。 戦後アメリカ医学の導入や衣食住の向上から、乳幼児や新生児及び高齢者の死亡率は下降を示し、昭和二十五年には平均寿命は六十歳に達し、その後も上昇を続けています。 しかし高齢化率はほぼ5%のまま推移していました。 ところが昭和三十五年頃から高齢化率が急上昇をし始めたのです。 この理由については気象庁の籾山博士の研究や老人病院の解析がありますが、それによると暖房器具の普及により、冬場での高齢者の死亡率が低下したためとのことです。 つまり医療の進歩よりは文化の進歩が高齢化率を高め平均寿命を延ばしていることが分かったのです。
この件については、アメリカのサッチャーの法則というのがあります。 それは知能が長寿をもたらしたというものです。 世界的な傾向として、各国の知能がつくる文化や生活水準の高さと平均寿命はほぼ平行しているといえましょう。 その中でも日本は第一位になっています。 しかしそれでも平均寿命は八十二歳くらいで、第二周期の半ばにも達していないのです。
★まだまだ寿命は伸ばせます 昔は天寿・天命・定命などと言って寿命は決まったものと考えられていました。 しかし遺伝子学者は「寿命は生まれつきに決まっているが、延ばすことも縮めることも出来る」と言っています。 このことは、生まれつきの性格(気質)の中には長寿の性格もあるし病気になりやすい性格もありますが、病気になり易い性格でもその後の経験や職業によって円い穏やかな人格に変われば長寿にもなれますし、長寿の性格の人でも健康法を間違えば長寿にはなれないこともあるということです。 また「現在の99%の人は自らストレスをとりこんで自殺している」との説(浜松医大・高田明和教授)もあります。 これは一般がストレスが死因疾患など病気の原因になることを知らないためだからです。 その裏付けとして、高齢者の死因解剖所見によると、死因疾患の予防をすれば誰でも最高寿命と言われる百二十歳に到達出来る、と言っています。このように寿命はまだまだ伸ばせるのです。
★生涯学習の必要性
しかし、四十歳ころから人生のストレス期になりますから、生活習慣病が増加し始め受療率が急上昇していきます。 そして認知症(痴呆症のこと)が五十歳ころから始まり、八十歳代50%、九十歳代75%、百歳以上では98%という高率となり、これらに平行して入院や寝たきりが増加しています。 こんな状態で百歳以上生きても、何のための長寿かと言いたいし、長寿を祝う気持ちにはなりません。 昔のことですが三〜四世代の大家族同居していた時代で、多くの人生のサンプルが身近にあるにもかかわらず「五十にして四十九の非を知る」と言われているように、人生は失敗の多いものです。 その結果、高齢期には過去のしわ寄せが来て、老化症状による苦しい晩年を迎えることになっています。 今の核家族では誰も人生について教えてくれません。 人生は波乱の多いものですが、その人生の概略を事前に知って賢く生活するために生涯学習制度があります。 これは胎児から死亡するまでの人生の生き方の流れを知るための自らが学ぶ制度です。 しかし、誰も学習の必要性が分からないために、有名無実に終わっています。
★生涯幸福に生きるための生涯学習とは健康学を学ぶこと 人生で一番楽しいのは、種族保存の義務を終えて自由となり、好きな生きがいによって日常を快適に暮らし、時には親しい仲間と集まる社会参加を楽しむ高齢期です。 そして、夫婦ともども支え合いながら健やかに晩年を送り、終わり良ければ全て良し、良き人生であったと大往生したいものです。 そのためには健康長寿を究める健康学が必要となります。 その健康学の目的は、いろいろな科学分野の力を得て、前向きに健康長寿で幸福な人生の歩み方を求め、そして最終的には、万物共生・世界平和・地球を守ることです。 今やいくら学校教育を正しても家庭の基礎的な子育てがされていないと役に立ちません。 誰もが今何をすべきか、これから先はどうするか、真剣になって生涯の生き方を学ばないと、日本列島は沈没の運命にあります。 その生涯学習の内容は以下に述べる健康学なのです。 |
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