阪神淡路大震災から20年の月日が過ぎた今、あの凄まじかった震災医療の状況も徐々に忘れられていくようである。 ところで、以前、阪神・淡路大震災から約3年半が過ぎたころ、当時のことを比較的冷静に判断できるときであると考え、多くの患者さんを引き受けた甲南病院における震災医療活動について、将来のために残しておくべきではないかと思い、震災直後に作成していた原稿をもとに、当時の様子を平成10年8月に小冊子にまとめておいた。 また、この阪神淡路大震災は近年の震災医療の原点とも考えられることから、当時多くの患者さんで溢れかえった災害医療現場からの、初期医療の状況についての報告と、院長としての私の体験を記載し、初期医療の指針づくりの一助として役立ててもらうことも考えて、阪神淡路大震災後20年の節目に本書を出版することにした。
すでに、識者によって災害医療に対するマニュアルづくりが行われているが、今後のさらなるより良き指針づくりの少しでも参考になることがあれば幸いと考えている次第である。
主な目次
第一部 震災医療の現場からの報告
1 はじめに 2 当院での災害診療
(1)外来患者
(2)災害入院患者
(3)入院患者の疾患分類
(4)震災当初3日間の死亡者数
(5)転院患者数および転送法
(6)震災当初の職員出勤状態 3 ライフラインの復旧状況
(1)電気、水道、ガスの復旧状況
(2)検査及び電算部門
(3)給 食 4 1月23日以降の病院の状況
(1)診療状況の変化
(2)来院患者の傾向
(3)職員の動向
(4)経営面
第二部 震災医療の内容とそのあり方について
1 甲南病院の震災医療活動上特記すべき事柄
(1)多数の患者を引き受けたこと
(2)傷害患者転院、転送用にヘリコプターを最も多く利用した。 2 医療活動の実際 3 患者転院、転送について 4 職員の出勤について 5 ライフラインに対する考察 6 その後の診療状況 7 その他
(1)記録に関して
(2)海外からの支援
(3)看護学校の再開問題
(4)心の繋がり
(5)災害後の各種調査に関して
(6)震災後の臨床研究の断念
(7)追憶 @ ボランティアによるトイレ用の水汲み隊の活動 A 看護学生の強力なボランティア活動 B 遺体置場での発見(本当の親切) C 臨床研修医の臨床教育 D 職員の積極的参加・協力体制 E 全て持ち出しで診療
第3部 震災医療を振り返って
1 震災医療で学んだこと 2 震災医療を通じての災害医療への提言
3 まとめ
◎ 震災医療への提言まとめ(私見)
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