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落語

ISBN4-88978-048-3

四代目 桂 文我 編著

CD四枚組・解説書付
B5上製函入り 400頁
定価(本体12,000円+税)

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待望のCD、遂に完成

上方寄席囃子大全集
CD4枚組・解説書付

弊社に直接ご注文の方に限り、著者サイン入り本をお送りします。
上方落語界で使用されている寄席囃子の、出囃子一二二曲、ハメモノ(上方落語の特色で、落語の中に使用してネタを盛り上げる曲)を一〇五局、合囃子・受け囃子・鳴り物を十六曲、合計二四三曲を最新録音でCD四枚に収録。
そして、ボーナストラックとして、昭和十年代に収録された上方寄席囃子のSPレコードの演奏を十曲、完全復刻。また、桂文我、前田憲司、草柳俊一による解説書付き。
上方落語に脈々と流れ続ける上方寄席囃子を、聴覚的に、視覚的に垣間見るには最適なCD全集。
昭和五十四年に桂枝雀に入門して以来、師匠から落語の教えと共に、鳴物の指導もしていただきましたことは、私に寄席囃子の重要さを実感させるに止まらず、落語観にも大きな影響を与えられたように思います。
二年前、上方落語界に伝わる寄席囃子を網羅したCDと解説書の刊行を企画・立案するに至りましたが、寄席囃子には古典の邦楽曲から歌謡曲、洋楽やアニメソングまで使用されているだけに、網羅は諦めざるを得ませんでした。
そこで、現在の上方落語界で比較的よく使用される曲を選び出すことに照準を合わせ、私なりに大まかなジャンルで区分けしてみたところ、次の五項目となったのです。

(1)「出囃子」
演者が高座へ上がる時に使用する曲です。 最近の歌謡曲まで数えると膨大な数になるので、古典の邦楽曲を中心に、現在の上方落語界で耳にする曲を収録しました。

(2)「ハメモノ」
落語の中で演奏され、ネタの雰囲気を高めるための曲や唄です。滅多に演じられない落語に使用される曲や、演者の唄や語りで演奏される長唄や浄瑠璃などの収録は諦め、ポピュラーなネタに使用される曲を中心に収録しました。

(3)「合囃子」
『曲芸』に『奇術』、または『太神楽』や番組の繋ぎに使い、寄席や落語会でよく使用される曲を収録しました。

(4)「受け囃子」
演者が落語を演じ終えて、高座から下りる時に使用する曲で、現在も耳にするものを全て収録しました。

(5)「鳴物」
寄席や落語会の開場や開演、終演や休憩などを知らせ、景気付けにも使用する太鼓などの演奏を収録しました。 今回の録音に使用した楽器を、ご紹介しましょう。
〔1〕「三味線」
棹は紅木、紫檀などの堅い木で作られ、花梨で出来た胴の両面には猫や犬の皮を張ります。それに太さの違う三本の糸を張り、糸と胴の間には象牙や骨で作られた駒を挟み、象牙などで作られたバチで弾きます。
〔2〕「鳴物」
胴の回りを「調べ」という紐で締め上げて甲高い音を出す小太鼓の「〆太鼓」、大きな胴に牛の皮を張って深くて大きな音の出る「大太鼓」、手で握れる大きさで鹿の角が付いた撞目で打ち鳴らす金属製の「当たり鉦」、他にも「銅鑼」や「木魚」、「木鉦」に「木琴」、「チャッパ」や「柝頭」に「ツケ」などがあります。
〔3〕「笛」
三味線の音の高さで種類を替え、三味線の旋律に合わせて吹く「篠笛」と、太めの煤竹に籐が巻いてあって、太鼓のリズムに合わせる「能管」があります。
他にも「桶胴」や「カンカラ」、「小鼓」や「本釣り」、「駅鈴」などを使用する場合もありますが、今回の収録では寄席や落語会で常備しているものや、手配しやすい楽器で演奏しました。
今回、使用した鳴物は、全て私の師匠・桂枝雀が桂小米時代に購入し、晩年まで独演会などで使っていたものです。
学生の頃から少なからず寄席囃子に興味を持っていた私に、師匠は「鳴物は内弟子部屋に常備して、いつでも稽古してよろしい」と言って下さり、鳴物の指導にも力を入れて下さいました。
加えて、その頃にかつら枝代師(桂枝雀夫人)が晩年の池中スエ師の門下生となり、幸せなことに私は枝代師の三味線の稽古に付いて鳴物の稽古を積むことが出来たのです。
当時、スエ師の門下生は森キヨ子師のみで、枝代師が入門したことで林家とみ師の流れを汲む池中スエ門下は二人になりましたが、その半年後にはスエ師が他界されます。
現在では森キヨ子師も引退され、スエ師の門下生は枝代師のみとなりましたが、その許にかつら益美、高橋真喜、浅野美希らが集い、池中スエ師の系統が繋がることになりました。
また、笛の桂米輔兄は、私が笛を教わった恩人で、師匠から「うちの一門にも笛を吹ける者が居た方が良い。 あなたが習いなさい」と言われ、内弟子修業を終えてから米輔兄の許へ通うことになったのです。
戦後の上方落語界でしっかり笛の吹ける噺家は皆無に等しかっただけに、戦後に於ける上方落語界の笛は米輔兄から始まったと言っても過言ではないでしょう。
現在、笛の吹ける噺家は米輔兄の許でお世話になった者が多く、惜しげもなく懇切丁寧な稽古をして下さる米輔兄には、足を向けて寝られない噺家が、私も含めて数多く居るのです。
私が務める太鼓に、桂米平、桂紅雀、桂まん我が当たり鉦や銅鑼などを担当し、派手で陽気な上方寄席囃子の鳴物が収録出来たと思います。
録音場所は普通、スタジオを使うものですが、私はどうしても師匠宅の稽古場で録音したいと考えました。
師匠が高座で微笑む写真パネルが置かれている稽古場での録音は私の念願で、いつも落語の稽古をつけていただき、師匠の雰囲気に満ちた空間で録音が出来ればと思ったのです。
この申し出も枝代師は快諾して下さいましたが、果して稽古場が寄席囃子の録音場所に相応しいかどうかは不安でしたが、私の落語のCD録音を依頼している草柳俊一氏に録音場所の下見をお願いし、入念なチェックと試し録りの結果、「何の支障も無し」の結論を得ることが出来たのです。
収録曲の選別は、頭を悩ませました。 殊にハメモノは、演者の台詞や唄と一緒に三味線を演奏する場合が多く、演者のキッカケや台詞が無いと成り立たないものもあるので、演奏が義太夫や端唄を唄う曲や、珍しい芝居噺のみに使用される曲は除外し、寄席や落語会で頻繁に上演されるネタのハメモノの曲を中心に収録しました。
出囃子の範囲も広いため、米朝一門を中心に使用される曲を多く収録したことで偏りを感じる方もあると思いますが、完全網羅は無理という理解の上で、納得していただければと思います。
そして、解説に「○○の出囃子に使用されている」と記していますが、出囃子の使用者は変わることも多く、現時点でわかるだけを掲載し、私以上の芸歴の噺家か物故者、またはその出囃子を十年以上使用している噺家に限って表示することに決めました。
間違いや調査不足も多いと思います。 流派や演奏者で曲の演奏が異なるため、楽器の演奏の解説も曖昧な言い方があるのも否めませんが、それだけ寄席囃子の枠が広いと捉えていただければ幸せです。
昭和四十年代から平成の今日まで、上方寄席囃子のレコードやテープ、CDが一般で市販されたのは二、三種類しかありませんでした。
今回の企画から、また違う寄席囃子の展開が見られたり、いずれ改定版も刊行出来ることを期待しつつ、今回の企画を世に問うことに致します。
どうぞ、一つ一つの曲をお聞き下さり、忌憚のない御意見を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。