|
ISBN978-4-88978-094-9 |
藤掛 明著 |
四六判 224頁 定価 (本体1,400円+税) |
|
|
|
雨降りの心理学 −雨が心を動かすとき− |
あなたの雨にまつわる思い出には、どんなものがあるだろうか。
大切な日ほど、そして、かけがえのない場面ほど、そのとき雨が降っていたということはないだろうか。
実人生において雨が降っていたというのは、おそらく主観的なものであろう。 人は雨を心象イメージとして利用しながら、自分の生き方や大きな決断を過去の記憶におさめているのだと言える。 だから、人は雨の日のできごとをより印象深く思い返すことがあり、他の状況以上に記憶に強く焼き付けられるのである。
そして、映画や小説の名場面であればなおさらである。作家は、雨が心を動かすことを感覚的に知っており、描き込んでいく。 だからますます強い印象が残るのである。 名作といわれる物語ほど、雨の描き方が見事である。深い心の動きと一体となって、絶妙な世界を描き出している。
なぜ雨が心象イメージになりやすく、どのような心の動きをどのように反映させていくのか。 それらのことを、多くの小説を素材にして味わうのが、本書のテーマである。
本書は四つの部分から成り立っている。
序章は、本書全体の導入と要約になっている。
ついで第一部は、雨のイメージを、人のストレスととらえ、そのなかを強行突破していこうとする人の生き方を読み取った。 背伸びとやせ我慢の心性を、様々な観点から扱っている。
第二部は、雨のイメージを、過去を洗い流すものととらえ、癒しと自己再生の生き方を読み取った。過去との決別、悲嘆の処理などの心理を扱っている。
終章では、趣を変え、傘を取り上げ、それを自分の世界の境界を作る営みととらえた。 傘の使われ方から、人の成長、自立、また援助関係まで、多様な世界を扱っている。
本書が、文芸評論として、カウンセリング論として、また人生後半の人生論として、人の心に関心のある多くの方々に届くことを願っている。
|
|